逆境を乗り越える力をつける!子どもの自己肯定感を育む方法
□自分なんて、社会に必要ないと感じる
□人からの批判や評価にとても弱い
□自分にはできない、とよく思う
□少しの失敗にひどく落ち込む
□常にストレスを感じている
こんなふうに感じているとしたら、もしかしたら自己肯定感が低くなってるかもしれません。
自己肯定感は、人生のあらゆる場面で影響を及ぼします。
「自己肯定感」って何?
「自己肯定感」。最近よく聞くようになりましたが、その意味は、「自分のあり方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味する語。 自己否定の感情と対をなす感情とされる。」*1とされています。
また、小学校高学年の時期に、重視すべき発達課題の一つとして、自己肯定感の育成があげられています。
日本人は、特に自己肯定感の低い種族らしく、「私は人並みの能力がある」に「とてもそう思う」と回答した高校生は、日本7.4%、アメリカ55.9% 、中国33.4%、韓国16.7%と、日本がダントツで低い結果となっていました。
また、「自分はダメな人間だと思うことがある」に「とてもそう思う」と回答した高校生は、日本25.5%、アメリカ14.2%、中国12.2%、韓国6%と、これまた日本がダントツで高い結果でした。*2
日本人は、今の自分に満足せず、自分を批判しがちな子が多いみたいですね。
また、余談ですが、人間の脳は、ほっとくと「デフォルトマインドネットワーク」という無意識下で、過去の失敗への自己批判や後悔、未来への不安を延々と繰り返してしまうそうです。自分が悶々と自己批判を繰り返していたら、まずは、それに気づいて「今、自己批判してたな。デフォルトマインドネットワークだ!」と客観的にとらえるだけでも、負の連鎖を止めることができるそうです。
自己肯定感が高い子と低い子、何が違う?
では、自己肯定感が高い子には、どんな特徴があるのでしょう?
文部科学省の報告では、自己肯定感が高い方が、「難しいことでも、失敗を恐れないで挑戦している」「うまくいくかわからないことも意欲的に取り組む」、「ものごとを最後までやり遂げて、うれしかったことがある」、「人が困っているときは、進んで助けている」、「人の役に立つ人間になりたいと思う」、「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」と回答する割合が高くなっていました。
これらのことから、自己肯定感が高い子は、困難な課題にも意欲的に取り組み、つまずいた時にもあきらめずに最後までやりとげ、コミュニケーションや人に貢献しようとする傾向にあることが分かります。
一方、自己肯定感が低いと「自分は役に立たないと強く感じる」と回答する傾向がみられました。
自己肯定感を育むには?
では、自己肯定感を高めるにはどうすればよいのでしょうか。
同じく文部科学省によると、
・他者との協働のなかで、子供たちが自分の役割を果たすとともに、
・子供たちが集団又は個人の目標を達成した際に、周りの大人が認めることにより、成功体験を感じさせる
ことが、自己肯定感を高めることにつなげるそうです。
要は、グループワークに参加することや、ほめて育てる事が大事、ということですね。
その他、国立青少年教育振興機構によると、
・自然体験や生活体験が豊富な青少年ほど自己肯定感が高い
・「体力に自信がある」と回答した子ほど自己肯定感が高い*4
ことがわかっています。
自然体験とは、自然の中で遊ぶこと。山登りや川遊び、海辺の生き物探しや畑での栽培体験などもいいかもしれませんね。
生活体験とは、家庭で家事をおこなう経験でしょうか。日常的に家庭で自分の仕事(家事)を持ち、家族の役に立つという経験を積むことで、自己肯定感が高まると考えられます。そのような経験を積めば、自然と体力もついてくることでしょう。
特に、この生活体験は、健康的な食生活をおくる力にもつながります。
ある研究では、料理教室に参加した子どもたちの自尊感情(セルフエスティーム)が高まったと報告されています。*5
子どもたちに料理スキルを身に付ける方法はこちらをごらんください。↓
さらに、足立区の調査によると、自己肯定感等逆境を乗り越える力と、朝食を食べる習慣、運動習慣、読書習慣等が影響してしている可能性が示されました。*6
やればできる?やってもできない?
それから、「人間の能力は生まれた時から決まっている」と思うか、「努力すれば能力は延ばすことができる」と思うかで、失敗した時の自己肯定感が全く変わってくるそうです。
「やればできる!の研究」の著者キャロル・ドゥエックは、「人間の能力は生まれた時から決まっている」と思うことを「コチコチマインド」、「努力すれば能力は延ばすことができる」と思うことを「しなやかマインド」とよんでいます。
「人間の能力は生まれた時から決まっている」と思っている子は、自分が成功しているときは「自分は優れた人間だ」と自己肯定感が高い一方で、ひとたび失敗すると「自分はだめなやつだ」と一転自己批判に苦しむことになります。
そのため、自分が失敗しそうな難しいことには挑戦しなくなってしまいます。失敗すると、「自分がダメな奴だという証拠」になってしまうからです。
あるいは、失敗をほかの人やことのせいにして、自分を守ることも多々。
「お兄ちゃんが邪魔したから失敗したんだよ!もうこんなのやらない!」と、うちの子もよく言います…(涙)
失敗のほか、他者からの意見や批判に極端に弱く、常に他者からみた自分を意識していることも、この思いを持っている子の特徴です。
一方、「努力すれば能力を延ばすことができる」と思っている子は、難しい課題を与えるほど喜び、楽しんで挑戦しているというのです。失敗しても、どうすればできるようになるかを考え、工夫を楽しみます。
なんてすばらしい!子どもだけじゃなく、私もそうなりたい!(笑)
では、どうすれば、しなやかマインドを身に付けることができるのでしょうか。
ひとつには、子どもをほめる時に、「生まれつきの能力」をほめてはいけないそうです。「すごい!天才だ!」「頭がいいね」「かわいい」等自分では変えようのない特徴をほめると、失敗した時や自分を批判する人に出会った時に、自分が天才でも頭がよくもない、かわいくもないという事がばれやしないかとおびえることになってしまうというのです。子どもの頃、そういった経験をした心当たりのある方も多いのではないでしょうか。
そのため、ほめる時は、その子の「がんばり」や「工夫している点」等、努力をしている点をほめると良いとあります。
大人でも、失敗した時やできるか不安な時、「今できなくても、自分には成長できる力がある」と考えると、失敗や人からの批判は成功する方法を学べる貴重な機会であり、恐れる必要のないものとなります。
(キャロル・ドゥエック「やればできる!の研究」))
まとめ
子どもの自己肯定感を育てるには、グループワークへの参加、ほめて育てる事(ただし、生まれつきの能力ではなく、努力したことをほめる)、自然体験や生活体験(家事)を積極的にする、料理教室への参加、朝食を食べる習慣、運動習慣、読書習慣をつけることが有効だということがわかりました。
人生の幸福感にもかかわってくる自己肯定感。
幸せな人生を送ってもらうためにも、逆境でへこたれないで進むためにも、子どもたちにはぜひ身に付けたいですね。もちろん自分にも。
つい、毎日の忙しさで忘れがちになるけど、少しずつでも実践していきたいと思います!
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*1:自己肯定感(じここうていかん)とは何? Weblio辞書
*2:平成26年度 高校生の生活と意識に関する調査(独立行政法人国立青少年教育振興機構より)
*4:参考「青少年の体験活動等に関する実態調査(平成 24 年度調査)」
*5:小学生の調理に対する自信とセルフエスティームを高める非対面式による調理プログラムの効果, 栄養学雑誌,79巻, 2021, 30-38.
*6:足立区、子どもの生活実態調査H27年度報告書